最近では患者様も非常によく勉強されており、
「その治療にはエビデンスがあるのですか?」
とご質問をいただく機会が増えました。
今回は脂肪溶解注射の中でも比較的しっかりしたエビデンスが存在する「1%デオキシコール酸製剤」についてご紹介したいと思います。
ランダム化比較試験(RCT)が行われている脂肪溶解注射
脂肪溶解注射の中でも代表的なものが、デオキシコール酸(Deoxycholic Acid)です。
アメリカでは「Kybella(カイベラ)」という製剤がFDA(米国食品医薬品局)の承認を取得しています。
このKybella(開発コード:ATX-101)については、
- ランダム化
- 二重盲検
- プラセボ対照
という、医療分野では最も信頼性の高い試験デザインのひとつであるPhaseⅢ試験(REFINE-1およびREFINE-2)が行われています。
対象となったのは、いわゆる「二重あご」に悩む患者様です。
数百名規模の患者様が参加し、実際に脂肪が減少するかどうかが検証されました。
どのように注射したのか?
まず治療範囲に1cm間隔で格子状のマーキングを行います。
そして、
- 1か所あたり0.2mL
- 1%デオキシコール酸
- 4週間ごと
- 最大4回
という条件で注射が行われました。
投与量としては1cm²あたり2mgのデオキシコール酸となるよう設計されています。
結果はどうだったのか?
結果は良好でした。
医師評価では、脂肪量が改善した患者様の割合がプラセボ群と比較して有意に高くなりました。
また患者様自身の満足度も改善し、
「二重あごが気にならなくなった」
「輪郭がすっきりした」
と感じる方が多かったことが報告されています。
つまり、
「脂肪溶解注射は本当に効くのか?」
という問いに対して、
少なくとも1%デオキシコール酸については、
「効果があることを支持する質の高いエビデンスが存在する」
と言えるでしょう。
脂肪溶解注射でたるみませんか?
患者様から非常によくいただく質問です。
脂肪が減るなら、その分だけ皮膚が余ってたるむのではないか。
そのように考えるのは自然だと思います。
興味深いことに、このRCTではSkin Laxity Rating Scaleにより、皮膚のたるみについても評価されています。
結果として、
皮膚のたるみが全体として悪化したという結果は認められませんでした。
むしろ改善または変化なしと評価された患者様が大多数を占めていました。
少なくとも本RCTの範囲では、
「脂肪溶解注射によって脂肪が減少すると、たるみが悪化する」
という懸念は裏付けられませんでした。
もちろん、
「脂肪溶解注射は皮膚を引き締める治療である」
とまでは言えません。
しかし少なくとも、
「脂肪が減ると必ずたるむ」
という考え方を支持するデータはありませんでした。
個人的には、脂肪吸引のように一度に大きな容積変化を起こす治療ではなく、数か月かけて徐々に脂肪が減少することも関係しているのではないかと考えています。
また私は、余分な脂肪を長期間そのままにしておくことの方が、将来的な下垂につながる可能性があるのではないかとも考えています。
もちろんこれを直接証明した研究があるわけではありません。
しかし日々の診療の中では、
「脂肪が多い状態を長期間維持した結果としてフェイスラインが下垂してくる」
というケースは少なくありません。
そのため私は、
「脂肪溶解注射をするとたるむのではないか」
というより、
「不要な脂肪を減らし、将来的な下垂の負担を軽減する」
という考え方で治療に取り組んでいます。
当院ではどのように行っているか
ここからは論文の話ではなく、私自身の診療についてです。
まず患者様ご自身に、
「気になる部分」
「減らしたい部分」
をホワイトの皮膚鉛筆でマーキングしていただきます。
その後、私が脂肪の厚みやコンパートメントを確認しながら、青や赤の皮膚鉛筆でデザインを上書きします。
どの範囲を治療するかが決まると、おおよその必要投与量も決まります。
そのため施術前の段階で費用を計算してお伝えし、ご予算とのバランスを見ながら治療範囲を調整しています。
場合によっては優先順位の高い部位を残しながら、デザインを縮小することもあります。
注入方法へのこだわり
RCTでは細い針を用いて格子状に注射していますが、当院ではマイクロカニューレ(鈍針)を使用しています。
マイクロカニューレを用いることで、
- 内出血を減らす
- 患者様の負担を軽減する
- 薬剤を均一に分布させる
ことを意識しています。
最小限の刺入点から治療範囲全体へ薬剤を散布するように注入しています。
RCTと全く同じ方法ではありませんが、エビデンスを理解したうえで、実際の診療ではより安全性や快適性にも配慮しながら治療を行っています。
当院で使用している製剤について
今回ご紹介したRCTは、米国FDA承認薬であるKybella(ATX-101)のデータです。
当院では、同じく1%デオキシコール酸を主成分とする「Premium FatX Core」を採用しています。

Premium FatX CoreはFatXシリーズの最新世代にあたり、炎症や腫れを軽減するための改良が加えられています。
なお、本記事でご紹介した大規模RCTはATX-101のデータであり、Premium FatX Coreそのものを検証したものではありません。
そのため本記事は、
「1%デオキシコール酸製剤にはこのようなエビデンスが存在する」
という観点でお読みいただければ幸いです。
参考文献
- Jones DH, Carruthers J, Joseph JH, et al. REFINE-1, a multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial with ATX-101 for reduction of unwanted submental fat. Dermatologic Surgery. 2016;42(1):38-49.
- Humphrey S, Sykes J, Kantor J, et al. ATX-101 for reduction of submental fat: a phase III randomized controlled trial. Journal of the American Academy of Dermatology. 2016;75(4):788-797.
- Dover JS, et al. Characterization of tissue changes following deoxycholic acid injection for reduction of submental fat. Journal of Cosmetic Dermatology. 2018.
まとめ
脂肪溶解注射は「本当に効くの?」と言われることもある治療です。
しかし少なくとも1%デオキシコール酸については、質の高いランダム化比較試験によって有効性が検証されています。
美容医療では経験も大切ですが、エビデンスも大切です。
私はその両方を大切にしながら、患者様にとって最適な治療をご提案したいと考えています。
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