「口ゴボが気になるけれど、手術まではちょっと……」
このような場合、顎ヒアルロン酸は手軽に横顔を整える方法のひとつです。
当院でも日常的におこなっている施術で、短時間の注射で済む一方、顎の形や横顔の印象が大きく変わることもあります。
私自身、顎ヒアルロン酸は良い施術だと思っています。
ただし、
「口ゴボが気になっていて、将来的には骨切り手術も検討するかもしれない」
という方には、顎ヒアルロン酸を注射する前に、少しだけ待っていただきたいのです。
今回は、その理由についてご説明します。
顎ヒアルロン酸で口ゴボがカモフラージュされることがあります
顎ヒアルロン酸を注入すると、顎先を前方に出すことができます。
その結果、鼻先・唇・顎先の位置関係が整い、いわゆるEラインが改善して、横顔がきれいに見えることがあります。
これは顎ヒアルロン酸の大きなメリットです。
一方で、良くも悪くも、
軽度~中等度の口ゴボが、顎ヒアルロン酸によってカモフラージュされる
ことがあります。
つまり、口元そのものが後方へ移動したわけではなくても、顎先が前に出ることで、相対的に口元の突出感が目立ちにくくなるわけです。
もちろん、その状態でご本人が満足されているのであれば、それはひとつの治療結果です。
問題になるのは、
「やっぱり口元そのものを後ろに下げたい」
と考え、あとから骨切り手術を検討する場合です。
口ゴボの骨切り手術では、まず骨格を確認します
口ゴボに対して、上下顎セットバックなどの骨切り手術を検討する場合、当院ではまずCT検査をおこない、3D骨格模型を作成します。
そして、実際の骨格データをもとに、
- 現在の骨格がどのようになっているのか
- 歯や顎の位置関係はどうなっているのか
- 骨を後方へ移動させた場合、どの程度の変化が見込めるのか
などを確認しながら、手術のシミュレーションをおこないます。
ここで重要なのが、
シミュレーションの「Before」が、できるだけ実際の術前の状態を正確に反映していること
です。
顎ヒアルロン酸が入っていると、シミュレーションが難しくなります
例えば、顎ヒアルロン酸が入った状態でBeforeの写真を撮影したとします。
その写真をもとに骨切り手術後のAfter画像を作成すると、当然ながら、
「骨切り手術をした状態」+「顎ヒアルロン酸が入っている状態」
を想定したシミュレーションになります。
しかし、骨切り手術を検討する際に知りたいのは、
「顎ヒアルロン酸を入れていない状態から、骨切り手術をすると、どのように変化するのか」
ということです。
顎ヒアルロン酸による変化と、骨切り手術による変化が混ざった状態では、手術そのものによる変化を評価しにくくなります。
ヒアルロン酸を溶かさずにシミュレーションすることも可能です
ここは誤解していただきたくないところです。
顎ヒアルロン酸が入っているからといって、検査やシミュレーションができないわけではありません。
どうしてもヒアルロン酸を溶かしたくない場合には、問診やCT検査などから、
「もし顎ヒアルロン酸が入っていなかったら、現在のお顔はどのような状態なのか」
という仮想的なBefore画像を作成し、それをもとにシミュレーションすることも不可能ではありません。
ただし、これはあくまで推定です。
そもそも手術のシミュレーション自体が、現在の骨格や軟部組織などの情報から、手術後の変化を予測するものです。
そこにさらに、
「現在入っているヒアルロン酸を仮想的に取り除いた状態」
という推定を加えることになります。
そのため、私としては、可能であればヒアルロン酸を溶解した状態でBeforeの写真を撮影し、その状態を基準にシミュレーションをおこなうほうが、より適切だと考えています。
骨切り手術を受けるなら、ヒアルロン酸は早めに溶解したほうがよい
では、
「顎ヒアルロン酸を入れてしまった場合、いつ溶かせばいいの?」
という疑問が出てくると思います。
もちろん、すでに注射してしまった方が、慌ててすぐに溶かさなければならないという話ではありません。
まずは現在の状態を診察して、骨切り手術を本当に検討するのか、その場合にはいつ頃から手術の準備を始めるのかを考えればよいと思います。
一方で、
「骨切り手術を受ける」と決めたのであれば、私はヒアルロン酸はなるべく早い段階で溶解しておいたほうがよいと考えています。
その理由は、シミュレーションの正確性だけではありません。
ヒアルロン酸によって、注入部位の皮膚や軟部組織が押し広げられた状態になっている可能性があります。
骨切り手術を受けるのであれば、そのような状態をできるだけ早く解除し、本来の状態に近づけたうえで手術に備えておくほうがよいと私は考えています。
また、顎ヒアルロン酸については、頻度や程度はまだ十分に明らかになっていないものの、注入後に顎の骨吸収が確認されたという報告もあります。
もちろん、これは「顎ヒアルロン酸を入れると骨が溶ける」という話ではありません。
実際、顎ヒアルロン酸は一般的に高い満足度が報告されている施術です。
ただ、
骨切り手術を受けないのであれば、その可能性を臨床上あまり問題にしないとしても、これから骨を切って形を変える手術を受けようとしているのであれば、できるだけ余計な影響を残さない状態で手術に臨みたい。
私はそう考えています。
骨切り手術は、骨そのものを切って移動させる外科的な治療です。
だからこそ、手術を受けることが決まった患者様については、できるだけ条件を整え、安全性や仕上がりのクオリティを少しでも高められる状態で手術に臨むことが大切だと考えています。
「せっかく入れたのに、もう溶かすの?」という問題
ここで、もうひとつ患者様側の問題があります。
顎ヒアルロン酸を注射して、
「横顔がきれいになった」
と喜んでいたところ、
「やっぱり骨切り手術も受けたい」
となった場合です。
もし注射してからまだ日が浅ければ、
「せっかく入れたばかりなのに、もう溶かすの?」
というお気持ちになるのは当然だと思います。
費用をかけて注射したものを、短期間で再び溶解することになれば、経済的にも無駄が生じます。
だからこそ私は、
口ゴボが気になっていて、少しでも骨切り手術を検討する可能性があるのであれば、顎ヒアルロン酸を先に注射するのではなく、まず骨格を確認しておくこと
をおすすめしています。
その結果、
「骨切り手術は必要ない」
ということであれば、その後に顎ヒアルロン酸を検討すればよいのです。
すでに顎ヒアルロン酸を入れてしまった方へ
ここまで読んで、
「もう顎ヒアルロン酸を入れてしまった……」
と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
でも、心配する必要はありません。
すでに顎ヒアルロン酸が入っている状態でも、まずはご相談いただいて大丈夫です。
CT検査などで骨格を確認したうえで、
- そもそも骨切り手術を検討する必要があるのか
- ヒアルロン酸を残したまま相談を進めるのか
- 一度ヒアルロン酸を溶解してからシミュレーションするのか
- いつ頃溶解するのがよいのか
などを、その方の状態やご希望に合わせて相談していきます。
「ヒアルロン酸を入れてしまったから、もう骨切り手術の相談はできない」
ということではありません。
すでに注射を受けている方は、まずはそのままご来院ください。
口ゴボの治療は「何をするか」だけでなく「順番」も大切です
顎ヒアルロン酸は、短時間の注射で顎先の形や横顔を整えることができる、便利な施術です。
一方、
「口ゴボが気になっていて、骨切り手術をする可能性もある」
という場合には、顎ヒアルロン酸を先に注射することで、あとから一度溶解する必要が生じることがあります。
そのため、
口ゴボが気になっている方は、顎ヒアルロン酸を注射する前に、一度骨格を確認してみる。
これが今回、私がお伝えしたいことです。
もちろん、検査やシミュレーションをおこなった結果、
「骨切り手術までは必要ない」
という判断になることもあります。
その場合は、その結果を踏まえて顎ヒアルロン酸などの治療を検討すればよいのです。
せっかく注射したヒアルロン酸を、あとから溶かすことにならないためにも。
口ゴボが気になっていて、顎ヒアルロン酸を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。
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