骨切り手術後に「感染」すると、どうなってしまうの?

骨切り手術後の「感染」とは? (1) ブログ

今回は、骨切り手術後の「感染」について書いてみたいと思います。

なお、今回の記事は、完全なエビデンス・ベースドの記事ではありません。

もちろん医学的なエビデンスを大切にしていますが、骨切り手術を3,000件以上経験してきた私・奥田自身の経験も踏まえた、いわば「エクスペリエンス・ベースド」の記事であることを、あらかじめお断りしておきます。


そもそも「感染」とは?

私たちの口腔内には、非常に多くの種類の細菌が常在しています。

普段は、こうした細菌と私たちの身体は共存しているため、特に問題が起こることはありません。

ところが、骨切り手術では口腔内を切開します。

そのため、口腔内に存在する細菌が手術によってできた傷を介して、通常は細菌が常在していない組織の中に入り込む可能性があります。

そこで細菌が増殖すると、身体の免疫反応が起こり、炎症が生じます。

その結果、

  • 腫れが通常の経過より強くなる
  • 腫れがなかなか引かない
  • 痛みが強くなる
  • 赤みや熱感が出る
  • 膿がたまる
  • 傷から膿や浸出液が出てくる

といった症状が現れることがあります。

つまり、骨切り手術後の感染では、「通常の術後経過とは異なる炎症反応が起こる」と考えていただくと分かりやすいと思います。

単に「腫れている=感染」ということではありません。

骨切り手術後は、感染していなくても当然腫れます。

大切なのは、通常の術後経過と比べて、腫れ方や痛み、経過に明らかな変化が出てくることです。


感染すると、身体の中では何が起こるの?

感染が起こると、身体は細菌を排除しようとします。

免疫細胞が細菌と戦い、炎症反応が起こります。

また、感染によって膿がたまることがあります。

膿というのは、細菌や、それと戦った免疫細胞、壊れた組織などが混ざったものです。

身体としては、こうした感染部位をそのままにしておくのではなく、細菌や膿を身体の外へ排出しようとします。

その結果、手術によってできた傷の一部が開いてしまい、そこから膿や浸出液が出てくることがあります。

手術後の傷が一部開いてしまうことを、医学的には「創離開」や「縫合不全」と呼びます。

もちろん、傷が開いたからといって必ず感染しているわけではありません。

ただ、感染によって膿がたまった場合には、その膿が外へ排出される過程で傷が開くことがあります。


感染したら、どのような治療をするの?

感染が疑われた場合には、感染の程度や状態を確認したうえで治療を行います。

その一つが、傷の中の洗浄や排膿です。

感染部位に膿がたまっている場合には、それを外へ出し、傷の中を洗浄することで、感染の原因となっている細菌や膿を減らしていきます。

また、抗菌薬を使用することもあります。

抗菌薬は、細菌の増殖を抑えたり、細菌を殺菌したりすることで、感染をコントロールするために使用します。

つまり、

「洗浄・排膿で感染部位の細菌や膿を減らす」

ことと、

「抗菌薬によって細菌の増殖を抑える」

ことを組み合わせながら、身体が感染をコントロールできる状態にしていくわけです。

もちろん、感染の程度によって必要な治療は異なります。


感染したら、必ず大変なことになるの?

ここは、骨切り手術を検討されている方には知っておいていただきたいところです。

感染は、骨切り手術後に起こり得る合併症の一つです。

一方で、感染したからといって、必ず重大な問題になるわけではありません。

実際の臨床では、感染を早い段階で発見し、適切な処置を行うことで、その後問題なく治癒していくケースもあります。

私自身、これまで3,000件を超える骨切り手術を経験してきましたが、当院で感染が起こるケースは多くありません。

当院でのこれまでの経験では、感染率は約1%です。

ただし、これはあくまで当院での経験に基づく数字であり、すべての骨切り手術に当てはまる数字ではありません。

実際、医学文献でも、骨切り手術後の感染率にはかなり幅があり、術式や感染の定義、抗菌薬の使用方法などによって報告される数字は異なります。

ですから、「骨切り手術をすると○%の確率で感染する」と単純に考えるのではなく、感染という合併症が起こる可能性があることを知っておくことが大切だと思います。


なぜ早めの治療が大切なの?

感染が疑われた場合に、できるだけ早く診察を受けることが大切なのは、感染が広がることを防ぐためです。

感染が長期間続けば、感染がより深い組織へ波及する可能性があります。

さらに進行すると、骨にまで感染が及ぶ「骨髄炎」につながる可能性もあります。

もちろん、すべての術後感染が骨髄炎になるわけではありません。

しかし、感染を早期に発見し、適切に治療することは、感染が深部へ波及することを防ぐという意味でも重要です。

そのため、

「ちょっと腫れているだけかな」

「術後だからこんなものかな」

と自己判断して様子を見るのではなく、

通常の術後経過と違う腫れ方をしている、腫れが一度引いてきたのに再び強くなってきた、痛みが強くなってきた、傷から膿のようなものが出てきた、発熱がある

など、気になる変化があれば、早めに手術を受けた医療機関へ相談することが大切です。


感染を防ぐためにできること

感染を完全にゼロにすることはできません。

ただし、感染のリスクを下げるためにできることはあります。

その一つが、手術前からの口腔ケアです。

骨切り手術では口腔内を切開するため、手術前から口腔内をできるだけ良好な状態にしておくことは大切です。

当院でも、骨切り手術をお受けになる患者様には、術前の口腔ケアについてご案内しています。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

また、手術後の生活においても、十分な睡眠や適切な栄養を確保することは、身体が回復していくうえで大切です。


感染について、知っておいていただきたいこと

手術には、メリットだけでなく、リスクやデメリットがあります。

感染も、その一つです。

私は、手術を検討されている方には、メリットだけではなく、こうしたリスクについても、できるだけ知っておいていただきたいと思っています。

なぜなら、リスクを知ることで、

「そのリスクを理解したうえで、それでも手術を受けたいと思うのか」

を、ご自身で考えることができるからです。

そして、実際に手術を受けることを決めたのであれば、必要以上にリスクを恐れるのではなく、

「どうすれば、そのリスクをできるだけ減らせるのか」

を知っておくことも大切です。

感染についても同じです。

感染する可能性があることを知る。

感染した場合に、どのようなことが起こり得るのかを知る。

そして、感染を疑う症状があった場合には、早めに診察を受ける。

こうしたことを知っておくだけでも、万が一のときの対応は変わってきます。

骨切り・骨削り手術を検討されている患者様にとって、今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。


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