顎プロテーゼや顎ヒアルロン酸で骨吸収は起こる?原因と対策を美容外科医が解説

顎プロテーゼや顎ヒアルロン酸で骨吸収は起こる?原因と対策を美容外科医が解説 コラム

顎プロテーゼや顎ヒアルロン酸について調べていると、

「骨吸収が起こるらしい」
「顎の骨が溶けるって本当?」

といった情報を目にすることがあります。

実際、顎プロテーゼや顎ヒアルロン酸の長期経過において、骨表面に骨吸収(骨の陥凹)が生じることは報告されています。

しかし、この話は必要以上に恐れられている一方で、正しく理解されていないことも少なくありません。

今回は、顎プロテーゼや顎ヒアルロン酸で骨吸収が起こる理由と、そのリスクを減らすための考え方について解説します。


骨吸収とは?

骨吸収とは、骨が少しずつ削られるように変化する現象です。

骨は一度作られたら終わりではなく、常に

  • 骨を作る(骨形成)
  • 骨を壊す(骨吸収)

を繰り返しています。

これを「骨リモデリング」と呼びます。

そのため、特定の部位に長期間圧力がかかり続けると、その部分の骨が少しずつ吸収されることがあります。

歯列矯正で歯が動くのも、この骨吸収と骨形成の仕組みを利用しています。


顎プロテーゼで骨吸収が起こる理由

顎プロテーゼは、オトガイ骨(顎先の骨)の表面に設置します。

そのため、長期間にわたって骨膜や骨表面に圧力が加わります。

さらに、

  • 会話
  • 食事
  • 表情の変化

などによってオトガイ筋が動くたびに、プロテーゼと骨膜の間に微細な刺激が加わります。

こうした慢性的な機械的刺激により、骨表面に軽度の骨吸収が生じることがあります。

実際、CT検査を行うと、プロテーゼ直下の骨表面に浅い陥凹が確認されることがあります。

ただし、多くの場合は軽度であり、自覚症状が出たり、健康上の問題になったりすることは多くありません。


顎ヒアルロン酸でも骨吸収は起こる?

「注射なのに骨吸収が起こるの?」

と驚かれることがありますが、ヒアルロン酸でも骨吸収が報告されています。

特に、

  • 骨膜下への注入
  • 大量注入
  • 長期間にわたる反復注入

などの条件が重なると、ヒアルロン酸による持続的な圧力が骨表面へ影響する可能性があると考えられています。

近年ではCT検査で顎骨表面の陥凹が確認された症例報告もあります。

ただし、こちらも多くは軽度であり、すべての患者様に起こるわけではありません。

また、ヒアルロン酸は時間とともに分解されるため、半永久的に圧力が加わるプロテーゼとは状況が異なります。


骨吸収は完全に防げるのか?

結論から言うと、完全に防ぐことは難しいと考えています。

プロテーゼであれヒアルロン酸であれ、骨表面に何らかの圧力が加わる以上、長期的な骨リモデリングを100%防ぐことはできません。

そのため私は、

「骨吸収をゼロにする」

というより、

「なるべく好ましい状態で安定させる」

ことが重要だと考えています。


顎プロテーゼで行える対策

① 術前のボツリヌストキシン注射

オトガイ筋の力が強い方では、術後に筋肉の収縮によってプロテーゼが頭側へ押し上げられることがあります。

そのため術前にボツリヌストキシンを注射し、オトガイ筋の緊張を一時的に弱めることで、術後早期の位置ずれリスク低減を図ることがあります。


② プロテーゼの固定(アンカリング)

プロテーゼが術後に微細に動き続けると、骨膜への刺激も大きくなります。

当院では、プロテーゼを周囲組織へ固定する「アンカリング」を行っています。

骨吸収予防効果そのものを証明した研究はありませんが、

  • 位置ずれを防ぐ
  • 不要な動きを抑える
  • 安定した被膜形成を促す

という意味で有利と考えています。


③ 術後のテーピング

術後のテーピングには、

  • 腫れを抑える
  • 組織の安定化を促す
  • プロテーゼの移動を抑制する

といった目的があります。

特に術後早期は被膜形成が完了していないため、この時期の安定化は重要と考えています。


④ 適切なサイズ選択

過度に大きなプロテーゼは、それだけ骨や軟部組織へ加わる力も大きくなります。

必要以上の突出を求めず、顔全体とのバランスを考慮したサイズ選択が重要です。


顎ヒアルロン酸で行える対策

① 必要最小限の量にとどめる

大量注入を繰り返すほど、骨膜への持続的な圧力は大きくなる可能性があります。

そのため、必要最小限の量で自然な変化を目指すことが重要です。


② 適切な間隔で治療する

短期間に繰り返し追加注入を行うのではなく、本当に追加が必要かを見極めながら治療を行うことが大切です。


③ 骨膜下に注入しない

ヒアルロン酸注入では骨膜上への注入が一般的ですが、骨膜下へ注入するメリットは乏しく、骨への圧力も強くなる可能性があります。

そのため、適切な層へ適切な量を注入することが重要です。


④ ボツリヌストキシンを併用する

オトガイ筋の緊張が強い方では、ヒアルロン酸だけで形を整えようとすると必要量が増えてしまうことがあります。

ボツリヌストキシンを併用することで、

  • オトガイ筋の緊張を和らげる
  • ヒアルロン酸の必要量を減らせる可能性がある
  • 注入後の形態を安定させやすい

といったメリットがあります。


院長の考え

私は、

「骨吸収が起こる可能性があるから顎形成は避けるべき」

とは考えていません。

実際には、

  • 顎ヒアルロン酸
  • 顎プロテーゼ
  • 骨切り手術

いずれの治療にもメリットとデメリットがあります。

大切なのは、

  • 適応を見極めること
  • 過度な変化を求めないこと
  • 長期的な変化も理解した上で治療を選択すること

だと考えています。

骨吸収のリスクを正しく理解し、できる限り安定した状態を目指しながら治療を行うことが、長期的な満足度につながると考えています。


まとめ

顎プロテーゼや顎ヒアルロン酸では、長期的に骨吸収が生じる可能性があります。

しかし、その多くは軽度であり、必ずしも大きな問題になるわけではありません。

重要なのは、

  • 適切な治療法を選択すること
  • 必要以上のボリュームを求めないこと
  • 注入物やプロテーゼを安定した位置で維持すること

です。

顎形成をご検討中の方は、短期的な変化だけでなく、長期的な経過についても理解した上で治療を選択することをおすすめします。


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